第24回 春分の章

2021年03月29日

お題:晩春、ゲリラ豪雨、弥生山


昨日、予報から外れたゲリラ豪雨が空を通った。

川向こうの弥生山は優しく染めた紅色を忘れ、

夏に向け緑を生やしている。

ふと、通りのカフェから漂うコーヒーの香りにつられ、

とんとんと階段を降りていく。

コーヒーだけではなく美味しそうな匂いもする。

ぐぅ、おなかが鳴る。

少し大きめの音に頬を染め、自分が弥生山の様だなと

すこしにやけてしまう。

「コーヒーとホットサンドをひとつお願いします。」

出来立てを受け取ると店を出て少し歩く、

そこには大きな桜の木がどうどうと立っていた。

下には花びらが積まれたベンチがある。

ささっと花びらを払ってベンチに腰掛ける。

ふわふわと舞う花びらがコーヒーに落ちた。

昨日のゲリラ豪雨で緑がかった桜を見て。

もう春も終わりか。

ふわぁとあくびをして、出来立てのホットサンドにかぶりつく

あちっ、中に入っているチーズが少し舌先をひりひりとさせる。

おなかいっぱいで少し眠くなってきた。

湿度を帯びた暖かめの風が晩春を思わせる。


touhukan 408文字


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