第1回
2018年08月24日
お題:蒸し暑い密室だった・切子硝子
391文字
べたべたと肌にくっつくような湿気と風通りの悪い部屋の中、机と座椅子、生活に必要最低限な家財が置かれた場所で、景色に合わない親戚から貰った切子硝子のコップで、乾いた喉に、冷蔵庫で冷たくなった麦茶を流しこむ、温度差によりコップに結露ができ、まるで汗を流しているようにも錯覚する。
ピンポーン
訪問者が来ること自体珍しいこの家にチャイムの音が響いた。
何も音のない部屋に機械的な音はどこか寂しく思えた。
そこから記憶は次の場所まで欠如している、チャイムの音が聞こえた後、
そこから今いる場所での記憶が全くと言っていいほど無い。
今自分がいる場所は、とても蒸し暑い密室だった。
なぜこの様な場所にいるのかがわからない。
察するに誘拐か何かだろうけど、心当たりが何もない。
ただ周りは何もない殺風景な部屋だ。
部屋なのかもわからない、何もない。
本当に何もない、扉もない。
自分が生きているかさえ、わからない。