第4回
2018年08月24日
お題:反射した鏡のように・紫陽花・死の季節
400文字
じっとりとした空気がまとわりつく部屋の中には誰もいない。
空調に問題はない。きちんと作動しているはずなのに湿気を孕んでいるせいか重い。
ただただ、重い。その重さを感じてくれる人も今はもういないのだけれど。手の届く距離にある小さな机にはいつ活けられたものだろうか、水分をなくした紫陽花が飾られている
この紫陽花は自分のようだと笑いがこぼれる
反射した鏡のような窓に映っていた艶やかだった花びらは、空気から吸い取られたように枯れ、そして誰からも見向きもされなくなった。
もう人の訪れないこの部屋に運んで来てくれた生花は彼女が持ってきてくれたものだ。
元気だろうか、また持ってきてくれるだろうか。願いなど無に等しい。
枯れた花のように代えることが出来たら、少しの水でその命を伸ばせたなら
何度も諦めたはずが浮かんでは消え、そしてまた消える。寒さを迎えることのできないこの体にとって、この時期はただの死の季節だった。