第3回
2018年08月24日
お題:水出し紅茶のシーサイド、アールグレイの日陰・畳
362文字 アンダー
海だ。夏だ。化生もダンシングマーチする夏晴れははしゃぎすぎに要注意だ。
真っ白な太陽に炒られた小麦色の砂浜に裸足を焼かれて波打ち際にミルククラウンを作って。身の丈に余るくらい大きな浮き輪に体をはめ込んで揺蕩って。
「ねえ、くじらにのってみたいわ!」
鋭い八重歯の無邪気な笑顔に釣られて、身軽夏のなモンスター達と海の中に大きな鯨を探しに行って。深い海の底まで透き通っていた光景にはしゃいで泳ぎ回ったのだった。
疲れたあ。
糸目を鷹揚に緩ませて、巻角を揺らしながら作っていた海の家――本間六畳の畳の上、唐傘のパラソルの日陰に寝転んだ。
「お茶、飲みますか?」
差し出されたアンティークの硝子の杯の中には、あの海みたいに濃く通った紅色と氷の乱反射。
受け取ったそれはカランと鈴のような音で回った。
喉を潤したそれは深い青の香りを一瞬強く叩きつけて通っていった。この一夏だけの、化生達みたいに。