第35回 初夏の章
2023年05月25日
お題:夏めく、チョコ、梅
「甘いものはすき?」
手持ち無沙汰に歩き出してばったりと出会った友人は相も変わらず変だ
甘いものは好きか、好きじゃないかと聞かれれば一等好いている。最近のお気に入りはサクサクとした軽い甘さのあのお菓子
「最近メレンゲが好き」
そう答えると、美味しいよねとだけ返事がある
質問の意図を探ってみるように表情を伺ってもなにも分からない
「じゃあこれやるよ」
はい、と握り拳を突き出され、右手の掌を向ければ載せられたのはちいさな梅だった
「甘いものじゃないのかよ!」
大声で反抗すれば、面白いだろ?とケラケラと笑う
甘いものを想像していた身体は条件反射で唾液が増えてしまうので抗議だ
「せっかく甘いものの気分だったのに」
「もう暑くなってきたからなあ、これでも食べて塩分補給してね」
言われてみれば袖の長さが短くなってきたし、太陽が登りきったあとの蒸し暑さは水気を含んだ夏めく香りがする
梅を口に含めばその塩気と暑さにようやく季節を感じた