第13回 梅雨の章
2020年06月21日
強いアルコール、五月曇、紫陽花
ぼろいアパートの窓から入ってくる雨が強くなりだした、
窓を閉めようと、重い腰を云々と持ち上げる。
はぁ、と間延びしたため息を零し、
ずるずると窓の方へ足を運ぶ。
窓の外には点々と散らばった紫陽花が咲いている。
もうそんな時期か、梅雨に関しては大体いい思い出と云うものはなく
嫌々と顔を濁らせて窓を、ガッと閉めた。
あぁ、と痛い頭を抱えて床に散らばった一番強いアルコールを
瓶のまま、ぐい、と喉に流し込んだ。
くんっと鼻の奥をアルコールが抜けていく。
あぁ、すこしましになったか。
窓に当たる雨音を聞きながら、
原稿が散らばった机へと戻る。
昼間だというのに、部屋は暗い。
五月曇、、、文字を描くと日頃使わないであろう
言葉も出てくるようになる。
今の自分と似たような暗さに少し笑えて来る。
あぁ、売れない作家は兎に角、ひたすらに
机に向かうしかない。
この6畳の世界だけは自分が居ていいと、
雨音もいつしかは遠く聞こえるようになっていた。
touhukan 399文字