第11回

2019年04月15日

ヴァンパイア、見えない犬、風 



胡散396

 吹き抜ける風が乾いてることに気付いた。もうすぐ寒くなるのだろうなと、ベンチに座った隣のぬくもりを撫でる。夜が冷えると人恋しくなるのだ。たとえヴァンパイアと言えども。

「なあアウトゥン、もうすぐハロウィーンだ」

 そう言ってまた愛犬を撫でる。人気のない屋敷だが、はたから見れば何もない空間で何かを撫でるパントマイムにしか見えないだろう。実際、この愛犬は見えない。そういう犬種なのだ。

「季節の変わり目に風邪などひいてしまったら万全にハロウィーンを迎えられないからな、気をつけなければ」

 そう言ってまた艷やかな手触りの毛並みを撫でる。陰もないが、触ればしっかりと伝わるしなんとなくどこにいるのかは分かる。

 ハロウィーンには秋と冬をまたぐ風が人間に病魔を運びもするのだが、人でないからといって平気なわけではない。風は化け物どもにも厄介な、そういう病魔もある。

「待ち遠しいなあ」

 そうしてまた愛犬の背を撫でるのだ。


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