第15回 梅雨の章

2020年06月21日

手毬花、梅霖、黒南風 


季節は梅雨、母のお見舞いで病院に来ているが、

なかなかに通い辛い季節である。

梅霖は途切れることもなくさぁさぁと空気を割いている。

あぁあぁ、と鳴く黒南風はどこか陰鬱とした表情で

壁を撫でている。

ただ中庭にある手毬花だけ、

青青と、赤赤と、我関せずといった具合に

堂々と顔をあげ咲き誇っている。

そこだけ別に切り取られた様で、

世界が違う様な気さえもしてくる。

母は梅雨が好きなようで

窓際にも折り紙でつくってある

少し不格好な手毬花が飾られている。

前から器用な母には尊敬していた、

私は誰に似たのか、手先は器用ではない。

父の顔を見たことはないが、

母はいつも嬉しそうに父の話をしていた。

たぶん私は父に似ているのだろう。

時折みせる母の表情からそんな感じがした。

不格好な折り紙をみて、嬉しそうに微笑んでいる。

だれか母の為に作ってくれたのだろうか。

日に日に増える手毬花の折り紙を

嬉しそうに眺めている。


touhukan 385文字


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