第16回 初夏の章

2020年07月19日

お題:小鳥、さえずり、刺繍、五月雨、鏡月


いつものバーでいつもの窓際の席、

太陽が昇るまえ、小鳥が鳴きだす前。

お気に入りの紫陽花の刺繍が入ったワンピースを着て、

からんからんとグラスの氷を回す。

ゆっくりと溶ける氷に

鏡月がじわじわと薄まっていく。

外からはさえずりが聞こえはじめる。

そろそろ帰ろう、そっと席をたつ。

お店を出ると外は雨が降っていた。

五月雨、すこしばかり長居している雨に

嫌気がさしながら、少し速足に帰路につく。

あぁ、お酒で火照った身体に朝時の雨が

気持ちいこと。

今だったら嫌なこともこの雨で流してくれそうだ。

木々の中からはさえずる小鳥達がばさばさと

低空飛行しながら別の木へと飛び移っていく、

ひゅうひゅうと飛ぶ鳥に羨望を抱き、

たったったっと、軽快に家に着いた。

窓際を見ると、太陽に透けた洗濯ものが

きらきらと風になびいている。

あぁそうだった、と。

重くなった頭をうんうんと振りながら、

濡れきってしまった洗濯物に手を伸ばす、

終わりそうで終わってくれない梅雨に

いやいやと頭を抱え、

軽くシャワーを浴びた後、クーラーで冷えた


touhukan 435


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