第17回 初夏の章
2020年07月19日
お題:眩耀、琥珀、白縹、しゃくしゃく、空のグラス
隣近所に住むおばあちゃんが瑞々しい梨をくれた。
ありがとう、とお礼をしながらそのままキッチンへと。
まな板を軽く水でながし、切れ味の悪い包丁で
ざくざくと食べやすい大きさに切る。
手元にあった適当な空のグラスにぽいぽいと梨を入れていく。
切った後の包丁とまな板をそのままに、
お気に入りの海が見える入側縁へと足を向ける。
眼前には白縹の海がきらきらと光っている。
遠くの方で黒々とした雲がうんぬんとこちらへ迫ってくる
風が少し強いだ気がする。
遠くで光る雲を見ながら、
甘い蜜を感じながらしゃくしゃくと梨を味わう。
もう一度空になったグラスを片付けようと
その場を立とうとしたとき
目一杯に眩耀がひろがった。
いつのまにか降り出した雨と雷に、ごろごろと鳴る空を
眺め、少しドキドキしながら食器を片付けに戻る。
また後ろの方でどーんと、大きな音がした。
雨が縁側に入るといけないので、
琥珀色のガラスが入った雨戸をがらがらと閉める。
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