第18回 初夏の章

2020年07月19日

お題:ぐるぐると、べたつく、氷、水打ち、夢見心地 


しらないの裏路地を歩いている、

じっとりと入り込む暑い日差しに

汗がすらすらと落ち、髪に、洋服にと

水分を含ませていく。

熱気と水分でべたつく空気に、

涼し気な音が聞こえた

キンキンと響く音は目の前の桶の中から聞こえてくる

桶には冷え冷えと氷が敷き詰められ

さむそうに胡瓜がひしめきあっていた。

それをぐるぐると老人が回している。

ふと、目が合って眩暈がするほどに冷えたきゅうりを

一つ、と差し出してくれた。

きゅうりを頬張りながら路地裏をでると、

水打ちされている道にでた

さっきとは打って変わり、

足元も涼し気で、洋服や髪についた汗も

気持ちよく感じた。

冷えたおなかをさすりながら、

夢見心地に目的地へと足を進める。

ふと、目が覚めるとむんむんとした空気で息苦しくなった、

熱気が部屋をぐるぐるとめぐっている。

夢か、どこかで氷の音がした。

「おはよう、冷たい麦茶いる?」

そういった彼女はとても眩しくて、また夢を見ているようだった。


touhukan 397


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