第18回 初夏の章

2020年07月19日

お題:ぐるぐると、べたつく、氷、水打ち、夢見心地 


小川のせせらぎ、遠くで聞こえるような夏虫の声、なんとなく感じるそよ風。夢見心地で蝶の微睡みを思い出していると、揺れる風鈴のりいんとした音で目が醒めた。

人の気配のない敷戸を開けた玄関、蚊帳を垂らした式台で寝てしまっていたらしい。暑いから水打ちをしようと思っていたのに、板張りがひんやり気持ちよくてつい。汗をかいて少しべたつくスカートのたわんだ裾をぱたぱたと気休めに揺らした。

とにかく起き上がって台所でピッチャーとコップにたっぷりの氷を入れる。それから薄めていない紫蘇ジュースをどちらにも注いでから玄関へ向かった。

足で適当につっかけを履いて蚊帳の外に出、ぐるぐるした日差しに目当ての縁側まで走る。

「あつい~」

コップに注いで冷えたそれを一杯飲んでから、水場に置いてある道具を手に取った。蛇口を捻ってざばっと出てきた水を桶で受け止めて、手始めに柄杓で周りに撒く。

むわっと立ち上がる夏の匂いが、好きだ。


胡散 396


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