第19回 啓蟄の章
2021年03月29日
お題:焼く、雲海、遠くの影
「ふぅ、、、これくらいでいいかな」
少し先を見れば落ち葉に埋もれた地面も自分の周りだけは地肌が見えている
切り取られたように見えるそれを作ったのが自分だと思うと達成感すら湧き出る
落ち葉のない地面に枯れ枝を積み重ね火種を投げ入れ消えないように息を吹きかけて少しずつ大きくしていく、まるで育てるように少しずつ大きくなれば可愛くも見えるものだ
「ふぅ」
ゆらゆら、ゆらゆら揺れる炎に手をかざすと太陽が沈んで少し肌寒くなったのを寄り添うように温めてくれる
焼くための前準備完了だ
「うわっ!」
突然大きな風が吹いて丁寧に取り除いた落ち葉が散らばる
火を見やると小さくなっていた
「まずい!」
慌てて落ち葉をかけてやり息を吹きかける
もわもわと先程は出なかった煙が周囲に広がる
かけすぎたか、煙の量が想像以上だ
広がった煙が辺りに漂って雲海のようだ
綺麗だなと見渡すと遠くの方に影が見えた
彼らもまた山に取り憑かれた住人なのだ
鈴木 393文字