第2回
2018年08月24日
お題:麦茶・結晶
418文字 オーバー
明礬の結晶を作りたいんだって、宝箱を見つけたみたいに笑うのを、ぬるくて薄い麦茶を飲みながら、また生ぬるく見届けただけだったんだけど。
あげる、なんて差し出されたのは、不規則な直線で形になった、透明で美しいだけの結晶イヤリングだった。
「協力者への礼はしとかないと」
汗をかき終えたグラスを持ち上げて麦茶を喉に流し込む。ただそれだけに少し時間を要したのは、いくつもの言葉を飲み込んだからだ。
助力も何も、本当に、のんべんだらりと見守っていただけだとか。塩でできたイヤリングは使うに困るとか。そもそも男だからとか。
「......ありがとう」
垂らしただけの白い糸の先にイヤリングを結んだだけできた、本当に子供のおもちゃみたいな。いや、本当に、お遊びで作られた物とわかってはいるのに。
手のひらで受け取って、汗で溶けないようになんて思ってしまうのは。そうやって、大切そうに掲げて見てしまうのは。
澄んだだけの結晶の先の笑顔に、満更でもない気持ちになってしまうのは。