第21回 啓蟄の章
2021年03月29日
お題:花霞、夏の果、じゃりじゃり
目の前をひらっと自分を誘うように花びらが踊っている。
遠くでは花霞がキラキラと輝いている。
朝方や夜はまだ少し寒さを感じる季節だが、
この季節が一番すきだ。
美しく、儚く、脆く。
ふっ、と吹けば消えてなくなってしまいそうな季節。
春というのは人の気持ちを高める成分が分泌しているのだろうか、
たぶんそうに違いない。
なんだって自分が今、そうなのである。
いつもは行かない様なコーヒー店に行き、
いつもはしないであろう散歩なんぞしているわけで、
コーヒーの苦さも相まって
春が綺麗に見える。
すきだなぁ。
きっとすぐ終わってしまう、
一年中ずっと死ぬまでこの季節が続けば
ずっと浮かれた気持ちで、陽気な気持ちでいられる。
きっとそうだ。
それに比べ夏の果なんて終わりだ。
木々に映える緑は生気を失い、自分まで悲しくなる。
じゃりじゃりと砂を歩く、軽く足を取られるが
そんな事は気にしない、少し濡れたズボンが気持ち悪いが
それ以上に、この春風が気持ちい。
touhukan 403文字