第22回 春分の章

2021年03月29日

お題:花守、衣替え、春潮


ざざぁ、、、と、鳴る海、それを見渡せる高めの丘に。

一本立派な桜の木が居る。

私はそこの花守だ、ひらひらと潮風に吹かれ舞う花びらが

肩や頭に乗っかる。

昼間空の下に立ってるだけでも

じんわりと汗が流れてくる。

そろそろ衣替えの時期だな。

パタパタと襟首を扇ぐ、正装とはいえ少し暑い。

少し着崩すと、さぁ__っと涼しい風が吹いた。

ふわっと桜から花びらが舞っていく、

波の様にゆらゆらと揺れる花びらは

どこまでも広がる海の様でとても吸い込まれる。

海の方へと桜が流れていく。

海はゆったりと波を産みながらそこにある。

海面に落ちた花びらはゆらゆらと揺れ

波がうんと飲み込んでいく。

春潮か、海に浮かび沈んで溶けていく桜は

どこら儚げで、こころがきゅっと締め付けられる。

浜に集まる一線の桜道はどこまでも続いている、

その道を辿ったら帰っては来れない気がして、少し怖い。

だがまたここでこの桜の生きる末を見ていたい。

そう思ってしまう私はわがままなのだろう。


touhukan 406文字


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