第23回 春分の章
2021年03月29日
お題:オレンジの空、カラカラ、雷及発声
遠くの空でカラカラと、雷が光る。さわやかな雷だ、
怖さなどない、愛おしささえ感じるほど小さい雷。
雷及発声。
さぁさぁと耳に心地よい音を運ぶ風に
窓際でゆらゆらと揺れるカーテンが舞い上がった。
そこから見える風景にはいつまでも続くオレンジの空があった。
揺れる緑がふわふわと気持ちよさそうに風に撫ぜられている。
風に乗せられてやってくる匂いは
くすぐったいような感じがして、どこかわくわくしてしまう。
草草が擦れる音と小さな雷の音はどこか田舎臭く、
人々の騒々しさや、車や機械の音から遠く離れた、
ぽつんと立っているこの家は寂しいようでどこか落ち着く。
吹いた風が髪を撫ぜ、さらと本のページを捲る。
髪を耳にかけ、ページを戻す。
遠くで少し強く雷が光る。
深い青がオレンジを飲み込んでいく。
ゆっくりと流れる空に、本をそっと閉じる。
机に置いてあるコップの氷がからんからんと、滑る音がした。
窓の外に目を移すと外は青く沈んでいた。
touhukan 397文字