第25回 立夏の章
2022年06月16日
お題:キンキンに、百千鳥、茅花流し
小さなガラス製のコップには緑色のソーダが入っている、
炭酸にあたった氷が浮き沈みしている。
キンキンに冷えたそれをごくっと喉に流し込む、
食道から胃袋まで流れていくのがわかった。
窓の向こうでは、季節を間違えた百千鳥が
パタパタと湿り気のある雨から逃げていくように
右往左往と逃げ回っている。
茅花流しが来るこの時期は、まとわりつく湿気から
逃げるように室内に籠ってただ空の機嫌を伺うことばかりして
しまう、じめじめとしていない雨は好きだが、
こうも熱気と湿り気が混ざった雨は好きになれそうにない。
ただ夜にもなると、熱気は去り、冷え切った湿気だけが残る。
纏わりつく冷気を長袖を着て、暖かいコーヒーでどうにかする。
最近の梅雨は大体そういう風に過ごしている。
雨は嫌いではないがこうも続くと普段考えない事も
考えてしまう、思考が沈むような、泥の様に
自然と一体になるような、そんな気分になる。
あぁ、目の前の薄まった緑色をみて思う。
touhukan 400文字