第25回 立夏の章

2022年06月16日

お題:キンキンに、百千鳥、茅花流し


庭の辺、小さな丘に銀色の穂が風に揺られたのを遠目に見た。草を薙ぎながら庭に出た自分まで近寄って来て、水の匂いを吹きつけて抜けていく。湿気た柔らかな風は茅花流し、雨が近いことを知らせて行ったのだった。昼にはもう暑くて、お茶でも飲もうと氷をキンキンに詰めたグラスとボトルを手に庭先に出たところだった。

放ったらかしのキャンプ用の椅子を指で引っ掛けて、とっくに花を散らした木の下に広げる。春の色が満開の頃は百千鳥とばかりに賑わっていた木々も、立夏を迎え葉を青くしていって、葉がさざめく音も日々粒立つよう。

雨雲が訪うまでを涼むべく、グラスに冷えた新茶を注ぐ。ころりと回った春の色を昼の下に愛でてから、一息に飲んだ。


usan 304文字


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