第27回 夏至の章
2022年06月16日
お題:水浅葱色、体温、自分にしか見えない
シチュ:風が吹くビルの間
身体にあたる風が体温を奪っていくのがわかる。
冷える身体をさすりながら目の前に流れる水路をじっと眺める。
水路は長く使われてきただろう水草などが生っぱなしになり、
さらさらと靡いている。
姉に渡された蜂蜜と生姜をいれただけのお湯を火傷をしないように
ちょびちょびと口に運ぶ、時たま強い風に身体がぐらつくが姿勢を屈め
どうにか持ちこたえる。徹夜続きで重い瞼を開けながら、
水浅葱色に輝く水面に視線を向けふらふらと泳がせる。
硬い肩と首、時間がないと私生活がくずれ、自分の存在意義がどうなのか、
考え始めている。姉のくれたおいしいお湯が冷えた身体に染みわたっていく、
姉はいつも自分の事よりも私の事を心配してくれたと思い出す。
通りの方ではせわしなく人々が肩をぶつけ合いながら生きている。
鞄の奥にある封筒を取り出して立ち上がる。
考えるのは後にして、とりあえずは美味しいごはんを姉と食べに行こう。
そして「やめてやった」と笑い飛ばしてやるんだ。
touhukan 407文字 不足:自分にしか見えない