第32回　梅雨の章

お題：水溜まり、朝まだき、そよ風

「くわぁ、、」

ん、まだ朝まだきの時間か夏前のこの時期は朝は心地の良い風がふく。

窓を開けるとふわあと鼻孔に梅雨の匂いが広がる。

目の前の道路をざああと車が通る。

水溜まりが横にきらきらと跳ねている。

すこしのぼった朝日が反射して淡いサーモン色がどこか

夢を見てるように錯覚してしまう。

眠気眼を覚ます為に

サイドテーブルに置いた呑みかけのウィスキーをとる、

氷が溶けてグラデーションになったそれを

くるくると回し、喉を潤すようくいっと流す。

下の階からはとんとんとりずむよく鳴る包丁の音が聞こえる。

味噌汁のいい匂いがしてきて

そそくさとキッチンに足を向ける

「おはよう」

妻が振りかえる、小窓から差す朝日が逆光になって

後光が差しているみたいに見えた。

冷蔵庫を開けてなにかないか確認する。

、、、食パンといちごジャムか。

冷蔵庫の前で食パンにジャムを塗る。

食べながら階段を上がる。

突き抜けるようにそよ風が吹いて鼻をすすった。

touhukan 396