第32回 梅雨の章

2022年06月16日

お題:水溜まり、朝まだき、そよ風


ハッとして眼が覚めた。呼吸は浅い。耳の中で音が鳴り響くような、ドクドクとした感覚が気持悪い。水分を失ってからだいぶ経っているのか口の中もカラカラだ。 毎晩見せられる夢は記憶には残らないもののいつも寝ざめを悪くする。覚えていればまだ対処の仕様もあるのだがなにぶん覚えていないのだからどうしようもない。 もう一度眠ろうと目を閉じても覚醒した脳は休んではくれない。 諦めて散歩でもするかといそいそと準備を終えて深呼吸ひとつ。 扉を開けるとまだあたりは暗くて少し肌寒い。 少し歩き出すとそよ風が汗ばんだ体を通り過ぎて行って心地よさを感じた。 うん、気持ちいい。 目覚めたときの気持悪さは吹き飛んでしまった。足取りが軽くなって当たりを見渡す余裕まででた。記憶にはないが雨でも降ったのだろう、足元には水たまりがあって水面が反射している。 きらりと輝いて綺麗。先ほどの鬱蒼とした気分も反射してどこかへいったようだ。 だんだんと陽がのぼってきたのか朝まだきの気配が迫っていた。 ああ、今日が始まる

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