第33回 梅雨の章
2022年06月16日
お題:ざあざあ、紫陽花、冷えた身体
昨日の夜から降り止まない雨が降っている。
部屋の中は湿気ており、読みかけの本は静かに波打っている。
窓に打ち付ける水しぶきは何かを責める様に激しく騒いで
どこかで心がざあざあと落ち着かないでいる。
湿気を誤魔化す為につけた扇風機が強めに髪をなでる。
冷えた身体を温める為に空いたペットボトルに残った
ウーロン茶を電気ポットのお湯で薄めて飲む。
ぐっっと喉がしまり、食道を通って胃に
ぬくもりが広がる感覚がする。
はぁ、と深めの息を吐くと白みだした空を眺める為
カーテンを開けるが外はまだ雨雲でどんよりと暗く、
地面に広がった紫陽花の花弁が地面を汚している。
それを眺めながらもう一口薄いお茶をすする。
すこしぬるくなったそれは自分の様で、
涙が溢れて、止まってくれない。
涙はぽたぽたと足の甲へと落ちて
川の様に血管をつたい床を濡らしている。
自分に浸るこの時間は虚しさしかないから
手元にあったナイフで首を切った。
touhukan 390