第36回 残暑の章

2023年05月25日

お題:線香花火、パン 


今年は一回も手持ち花火をしていないね、という話になった。夕焼けも遠い青紫から紺に襲を染める夏空の高さで、気付いた。  夏休み中に一度ある私服の登校日に二人で行った帰りでたむろした儘の格好だったから、ちょっとお腹空いたな、とコンビニに寄ったら、冷房に殺された空気の夏の残り香みたいに、線香花火だけがあった。  フックに掛かっていた三袋といくつかの菓子パンと冷たいジュースと、忘れないように安いライターをを白いビニール袋に詰めて、近所の公園に小走りで行く。  近所の小さくて遊具もない公園だから、花火禁止の看板があってもなくても大人に見咎められる事はない。  あんまり暗くなったら怒られるから、悠長にもしていられない。小川の近く側でガサゴソビニール袋を漁って、パンをくわえながら慌てて火をつけた先で火薬の匂いがして、甘い味と混ざってなんだかちょっと変な感じで、ふたりともおかしくて、数十本ある 

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