第39回 寒露の章
2023年10月19日
お題:秋晴れ、カキフライ、並ぶひらがな
高気圧の翌日の秋晴れ。不純物の少ない空はよく澄んで青の色が深く高い。前日の体調不良が嘘のように軽い足に白いスニーカーを履いた。
透明水彩の青が綺麗な水で薄く刷かれて街まで伸びる。半重力の街道に真っ白な雲みたいな靴が交互に躍るのが楽しくて、その視界をただ映画のように楽しんでいたところ、知覚から退いていたらしい腹から声が上がった。
ぐう、と語尾が尾を引いて、きゅるる。
朝のお茶と何かを摘んだだけだった……身体を思い出せば、薄藍の風に吹かれる軽さが淋しい。見慣れぬ煉瓦敷きの道を囲む店々を見回してみれば、からっとするほど遠慮ない大きさの晒しの木板に筆で書かれた黒々とした文字を見出す。脳が直接認めるように並ぶひらがなは、カキフライと書かれていた。
ぐう、と語尾が尾を引いて、きゅるる。
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