第4回

2018年08月24日

お題:反射した鏡のように・紫陽花・死の季節

389文字



梅雨の名残も枯れた八月、葬式の帰り道、まだ咲いている紫陽花を見つけた。

 遠くでジワジワ鳴きながら肌を焼く陽光の熱さが煩わしくてさっさと通り過ぎてしまったけれど、ふとした時に思い出す。

 規則的に葉脈の刻まれた大きな葉はくたびれ、酸性かアルカリ性かで青紫の花弁は汚い茶色の染みに侵されて萎れていっていた。灰青にけぶる雨の中で、あんなに透っていた姿と同じとは思えない。

 青ざめた空に波を刻むような陽炎の熱気に閉じ込められながら歩いていれば同じ道だ。いつかぶりかに見た、一つ前の季節の花。

 枯れた茎にうなだれる泥の色をしたそれを、誰が生きていたと思うのだろう。誰があの色を思い出すと言うのだろう。太陽を反射した鏡に当てられた目は自分の顔も見れなかった。

 痛い程に鮮やかで、眩しくて、熱くて、生命が叫ぶ季節のど真ん中。目を刺す光の白さ。永らえることを良しとしない、尽きるような影の濃さ。

 死の季節だ。


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