第40回 寒露の章

2023年10月19日

お題:空気、図書館、冷たい


川沿いを少し重いトートバックを肩にかけて少し早めに歩いていく。冷たい風がとても心地よい。車が通ることがないこの道は鳥や虫の声がちょうど良く聞こえてくる。視線をあげると通りの向こうに図書館が見えた。あぁ、やっとだ。兄に車を貸した後に図書館で借りた本を今日までに返さなくてはいけないことを思い出した。借りた本が資料用の本で厚みがあり重さもあるせいで、紐が肩に食い込む。「くそアニキ」忘れていた自分も悪いが、こんな時どうしても自分以外の人間を悪く思ってしまう。人間のサガか?そんな思いを頭の中でぐるぐると巡らせている間に図書館まで着いていた。中に入ると早速借りた本を返し、休憩がてらに本棚を見て回る。図書館の窓は微かに開けられており、外の空気がいい具合に図書館特有の香りと混ざり合っている。肩の痛みを忘れてしまいそうだ。

帰り、来た時よりも重くなったトートバックは無情にも私の肩へ重みをかけていた。


touhukan395


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