第41回 小寒の章

2024年11月07日

お題:夏霧、夕凪、稲積む


寝起きてみればもう日が暮れかけている。昼寝のつもりが、松の内とは言えあまりにも寝過ぎてしまっていた。出掛けの予定があったような気もするが、稲積むもまた正月の醍醐味と言い訳してもいいだろうか……。かけっぱなしだったストーブの上でずっとぐらぐらしていた健気な薬缶からこたつの上の急須にお湯を注いだ。

マグカップにあつあつなみなみと揺れるお茶で暖を取りながら庭に出ると、風は休んで痺れるような冷たさがしんしんと降りしきっているようだった。風も稲積みをしているらしい。

庭の小丘の崖の下に見える海は霧の中で夕凪を満喫して、のんびり地平線に広がっているように見えた。二つの季節の前に見えた夏霧の奥に広がっていた湖面のような引き締まったおもてとは、また違うかおだ。出掛けていればこんな親しい風景が見られなかったと思えば、やはり正月くらい、森羅万象みな稲を積んでこそかもしれない。

「寝ててよかった」


usan 390

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