第43回 落桜の章
お題:温め酒、花衣、生クリーム
朝、目が覚めると春というにはあまりにも寒く感じて充電してあるスマホを見ると昨日より10度も低いらしい、そりゃ寒いわけだ。なんとか足を自転車漕ぎして血流を回す、すこしだけ身体が温まってきた。どうにか身体を起こして、キッチンへ向かい、ケトルにお湯を入れ、椅子にかけてあったジャケットを羽織って外のポストに新聞を取りに行く、友人の付き合いで契約した新聞は特に契約を解除するにも至らず、朝ちょうど良い読み物である。
窓をあけると目の前の公園は花衣を纏っている。綺麗だな。沸騰したお湯に酒の入ったとっくりを鎮める、少し温まった温め酒を持って窓の柵に軽く身体を預ける。少しづつ冷えた空気を溶かすように酒を入れていく。そういえば昼に食べようと思ってるパスタには生クリームが必要だったか、と思い出し軽く背伸びをしてとっくりに入った酒を飲み切って、家を出る。安全に安全にと歩道の道路よりではないほうを歩く。温まった身体に桜の花が落ちる。
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かしゃかしゃかしゃかしゃ。
ただただ無心に生クリームを泡立てて行く。
ハンドミキサーを買えばよかった、後悔するのも大分と遅くなったが、
どうにか混ぜていく。もう何分ほど混ぜただろう。
今日は友人が遊びに来ている。その友人が生クリーム狂いなので、一応客人として迎えるために昨日かったケーキにのせる生クリームをどうにか泡立てているわけだ。友人には温め酒の様子を見てもらっている。どうにか生クリームに角がたち、ケーキにのせるまでにいたった。ケーキを皿に置き、自分の分には少しクリームを、友人にはケーキが隠れるほどのクリームを載せ、サプライズと一緒に机に持っていく。生クリームを見た友人は歓喜の声をあげうれしそうに踊っている。やっぱおもしろいなこいつと思いながらサプライズをする。隠し持っていた桜の花びらのデコレーションをクリームへ散らす。「ほら。花衣だよ」
友人はより一層喜び、踊り歌い、そして窓から飛び出していった。騒がしいやつめ。
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