第43回 落桜の章
2024年11月07日
お題:温め酒、花衣、生クリーム
お花見をしよう、と友人から招待を受けた。仕事で家族ごと海外から越してきて、洋建築のお屋敷に住んでいる、そのお家に。畳は一枚もないのに、庭にはいっぱいの桜が植えられていて見頃になったらしい。
車から降りてお土産の梅酒を包んだ風呂敷を抱えた。花衣の袖を遊ばせて大きな門構えに吸い込まれると、遅咲きの春の色が咲きこぼれて、手入れされた若草の一面を柔く染めている。
ようこそ、と出迎えた彼は気安くそのまま庭に設けられた席へ。梅酒も大層喜んで、早速家人に用意させると言ってテーブルへエスコートされた。
「お茶はランガルジャンが手に入ったよ」
「前飲んで美味しかったお茶ですね、う」しい」
白いテーブルの上にはガトーショコラと真っ白な生クリームが、カップやソーサーと銀のカトラリーの中で輝いている。暫しすると温め酒にされた梅酒が硝子の酒盃で運ばれた。春風に運ばれて、花びらと一緒に香気が芳しく届くのに二人で目を細めた。
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