第44回 立冬の章

2024年11月07日

お題:百千鳥、花冷える、漸寒


肌寒い夜の風に腕をさする。ようやく残暑が取り払われた秋の空気は熟れてゆく葉のやわらかい香ばしさと冷たい露の匂いがする。衣替えの時期をあと半月も過ぎれば長袖が常になり、漸寒の空気に金木犀が鮮やかな香りを添えるだろう。

なめらかな風に撫でられると、季節の中で一番遠くなった、恋しい季節を肌が思い出す。花冷える山の頂から見下ろした薄紅色の花の雲。間近くの梢から聞こえる百千鳥のせせらぐ歌声。今が一番遠い季節に居るからこそその遠さにあくがれる。

usan 217

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