第45回 十三夜の章

2024年11月07日

テーマ:十三夜

お題:薬掘、薫る


山の半ばほどに一本高く伸びる、煙が一つある。そこに薬堀りなる人物が一人、倒れた木に座り竹筒に入った水を飲んでいた。辺りはすでに暗くなり、ただ虫たちの声ばかり聞こえてくる。ぱきんと鳴る枯れ木をついと焚火へと投げ入れる。山に入ったものの、興が乗り、こんな時間まで山で過ごしてしまった。家に帰ろうにも闇で道は見えず、大変危険である。あきらめて野宿をすることにした。そういえばと手提げの中から友人にもらった茶葉を出した、大変珍しいものらしい、焚火で軽く湯を沸かし、その中に茶葉を入れると、すぐに良い匂いが薫るようになった。空腹のおなかへと入れると食道から胃へと流れる様がわかる。熱いのでやけどしないようにゆっくりと味わいながら飲む。うん、とてもおいしい。ふう、と息を着くと暗くなった空を眺める。丁度雲が切れ煌々と月が照らされている。あぁどうもあの月を見ていると腹が減る。ぐうとなる腹へとただ薫る茶を飲ませるばかりであった。


touhukan 407

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