第45回 十三夜の章
2024年11月07日
テーマ:十三夜
題:薬掘、薫る
下り際に、ちょっと開けた小山のてっぺんから見下ろす田は綺麗に刈り込まれていた。今年は田も山も豊作だった。帰りの傾斜に斜めがけの竹籠が振り子のように泳いだ。
山と、秋草がのびのびする庭のふちがいっとう虫が鳴いている。濡れ縁に籠や手袋を放って、台所から準備していたご馳走は右手に、黒木の角火鉢を左手に座布団へ腰掛けた。
まだとろとろと火勢の幼いまま、網の上にお団子を、ひとつ、ふたつ、みっつ……。焼き物の大きな湯呑みにほうじ茶を注いで、香ばしい風に吹かれる秋草撫でる優しい白い光を見た。そっと目を挙げて盃と言うには野暮ったい献盃だが、欠けた月は優しく光っっている。
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