第47回 ハロウィンの章

2024年11月07日

お題:かぼちゃ、ゴースト


中身をくり抜いて顔を彫った小ぶりなかぼちゃにグラタンの具を詰めようとした。

「中身を詰めるな!」

かぼちゃが喋った。焼かれる前の、ギザギザに皮を剥いた口は動いていない。

「中身を詰めるな!」

もう一度聞こえた。

「かぼちゃのゴーストだ」名乗った。青い炎がぽおっと宿る。

「くり抜いて顔を拵えるだけならまだしも、そんなもん詰めたらゴーストじゃなくなる!」

「元は中にあったのに?」

「他の奴らが混じってる!何を入れた?」

「玉ねぎ、チキン、牛乳、小麦、かぼちゃ……」入れた順に思い出す。見つめるボウルの中では、具を抱えたベシャメルソースが木匙を浮かせて手持ち無沙汰に湯気を立てている。良い香りがして、早く詰めて欲しそう。「あ、バターとナッツも」

「ナッツなんて!」

「そこなんだ」

「我慢ならん!かぼちゃのゴーストはオーブンより軒先に凱旋すべきだ」

大きな匙でたっぷり掬って詰める。じゅう、と音がしたので慌ててチーズを乗せた。

「ゴーストのままよ」

usan 409


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