第48回 ハロウィンの章

2024年11月07日

お題:仮装、夜行


とんがり帽子を深く被って、お菓子をぎっしり詰めた籠を腕に家を飛び出した。

幾重に垂れた紫色の夜に星辰が踊る夜、真っ黒い大蛇みたいな道をジャック・オ・ランタンの灯る道順通りに踵を鳴らしていけば、おもちゃ箱を開いたみたいに大演奏と歌がわっと溢れる。丁度角から飛び出してきた友人と耳打ち。

「私達、ばれないようにね」

「危なくなったらトリートしよう」

ヴェールを被せた魔女とマズルの檻を着けた狼男、の仮装をする人間なのだ。悪戯もののための長い長い夜の始まりを祝う行列は歌う。楽器の頭でたのしい悪夢を、おとぎ話の大演奏。

人だとばれたらどうなっちゃうか、人にはわからない。誰も帰ってこないから。だから人だとばれないように、爪を伸ばして夜行に加われ。

「いこ」

「うん」

ハロウィンの夜がはじまった!

もうとっくに覚えた歌を、レースアップの隙間からまろび出てしまいそうな心臓をそのままに弾かせながら手を繋いで飛び込んだ。

usan 396


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