第6回
2018年08月29日
お題:晩夏・真っ赤な
265文字 アンダー
夏が終わろうとしていた。
蒸すような風が涼しくなって、叫ぶ虫の声が鈴鳴りになって、絽一枚だけではなんだか肌寒くなって。夏の終わり。こんな季節には、なんだか郷愁じみた気持ちにさせられるものだ。ノスタルジィ、と言うのだったか。
広い庭から西の方を見れば、真っ赤に染まった太陽がゆっくりと、木々の向こうへ沈んでいく。若木に宿った青い実が、その季節の終わりに熟れて落ちる瞬間のような。
夜が来るのが、あまりにも惜しいと思えてしまう鮮やかさだった。葉を、土を、何もかもを赤く照らして染め上げているのが嘘みたいにもうすぐ紺黒が全てを眠らせるなんて。