第9回
2018年08月31日
お題:狂信、眠り、ジーザス、蛍光、夏の終わり
398文字
晩夏は夜風が涼しくて、それがどうにも気持ちよくて、眠りが浅くなってしまう。
心地よい風が体を撫でて、それで目が覚めた。
それなりの人数で宿泊をしている和洋折衷の建物は思わぬ所で作りにこだわっているのか通気性がよいので湿気もこもらず、窓を開けていれば風が入る。夏虫と秋虫が共に鳴き合う稀有な時期には音が多いが煩いとは感じないのだ。いくら耳を澄ませても、静かに聞こえるから。
まどろみに刺すような遠吠えが聞こえて。
静かに聞こえていたから。
とても煩くなって。
「......かみさま」
ああ、だか、おお、だかわからない音に続いて、嬉しそうに苛立った言葉が耳に流れ込んで。一気に心臓が動き出して瞳孔が収縮して月明かりの眩い薄闇に溶け込むように横たわっていた体が跳ね起きて。
遠吠え。
ああ、ああ、ああ! 自分の笑い声が耳に刺さって目の前が蛍光色に飛ぶ。貴方の言葉はよく聞こえる。信仰心の深い狂者に聞こえる言葉。異教徒を、騙れと。