第38回 清明の章

2023年05月25日

お題:茹だる、香水、光の粒


誰だ、春は陽気だなんて言ったのは。 憎らしいほど真上から見下ろす太陽はギリギリと陽の光を浴びせてくる 軽く羽織るくらいがちょうどいいと言っていたのに今の自分は汗まみれで不快指数高めである 待ち合わせ場所の丘まであと少し、そう思いながらじっとりと肌が湿っていくのを仄かに感じ、歩みを進める だいたいなんだってこんな何も無いところを指定したのか、待ち合わせだってここじゃなくても良いじゃないか と頭の中では文句が羅列している 「やっとついた……」 下を向いていた顔を上げ、待ち合わせの人物が目に入った途端に浮かんでいた文句の全てが消え失せていた 白色のワンピースは光の粒を纏うかのように内側から輝いているかのようで、吹いた風に乗って柔らかな知らない花の香りが香水のように甘く流れていく さっきまでの不快な気持ちが青空のように晴れてしまい確かにこれは春で、陽気には違いないと茹だる頭で納得してしまうほど彼女は綺麗だった 

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